水戸市の軒天剥がれから学ぶ!今回は軒天について徹底追究
今月に入り、水戸市内で軒天(のきてん)が剥がれたとのご相談が相次ぎ、現在も調査や工事を行っている最中です。いい機会ですので、今回はその軒天について深く追究してみたいと思います。
軒天・・聞いたことがあるようなないような?どこを指すのか今一つ分からないという方へ、このコラムが少しでもお役立ていただけましたら幸いです。軒下や軒先は一般的ですが、あまり聞きなれない軒天。家を見上げた際、屋根が外壁の外側に突き出している部位があります。ここを「軒」と呼び、その裏側の天井部分が「軒天」になります。軒の天井ということで軒天と呼ばれるようになりました。
※赤矢印参照
少し地味?なせいかあまり意識されていないところですが、実は重要な役割を担っているのです。
軒天の役割と必要性
①雨除け
軒天は屋根裏に水が侵入しないよう防いでくれます。外壁と屋根の結合部は特に傷みやすく、雨水が吹き込んだ場合、屋根や外壁に浸透しダメージを与えてしまいます。軒天は建物の劣化を抑え、耐久性を維持する効果もあるのです。
②目隠し
軒天がない場合、赤丸のように屋根裏の部材(垂木や野地板等)がむき出しなってしまいます。素敵なデザインのお宅でも、これでは外観を損ねてしまいます。建材を張りガードすることで美観を保ち、湿気や強風から家を守りましょう。
③延焼防止
火災が起きた際、室内の炎は窓から屋根に燃え移りやすく、住宅全体に火の手が回ってしまいます。軒天はそれらを食い止める効果があり、屋根を守っているのです。
④外壁の保護
軒天は雨水の吹き込みや直射日光を遮り、外壁の劣化を防止する役割も果たしています。猛暑が続く近年においては、室内の急激な温度上昇も抑制しています。
軒天材の種類は?
合板・ベニヤ板(木材系)
木製の軒天材です。比較的築年数が経った建物に利用されています。
板の上に木目模様の化粧シートを貼り、ヒノキ調などといった様々なデザインを施すことができます。
軽量で加工しやすく比較的安価ですが、経年劣化が早く耐水性や耐火性があまりないため注意が必要です。
ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)
新築住宅で幅広く普及している代表的な建材の一つです。珪藻土と水酸化カルシウム等を水で練り合わせてできた合板です。以前はアスベストも含まれていましたが、2002年に製造が中止され、現在国産のケイカル板には使用されていません。
合板・ベニヤ板同様安価で、湿気に強く腐食しにくい上に軽量という特徴があります。軒天に用いられる最大のメリットは、耐火性に非常に優れている点で「不燃材料」に認定されています。
スラグ石膏板(エクセルボード)
スラグとは必要なものを抽出し終えた後の残りの鉱物のことで、石膏と混ぜ合わせて固めた板になります。
防火や耐火性、断熱性のある素材で、ケイカル板と同様に「不燃材料」に認定されており、建材として広く普及しています。
扱いやすく加工しやすいため、いろいろな箇所に使われますが、ケイカル板と比べ価格が多少高めです。
フレキシブルボード
セメントと補強繊維を原料とする軒天材です。こちらも「不燃材料」で、繊維強化セメント板やスレート、スレートボードと呼ばれる場合もあります。
ケイカル板と比べ重量が2倍ほどあり、強度の高い素材として知られています。また湿気にも強く、経年使用でも劣化が起こりにくいと言われています。
価格はケイカル板と比べると高めになります。
金属板
ガルバリウム鋼板やアルミスパンドレル等の錆びにくい金属を使用しています。
カバー工法の一つで、屋根の金属板がそのまま軒天を包み込むように施工される場合もあります。
非常に軽量で耐火性及び耐久性に優れており、近年は軒天材として普及するようになりました。高級感があり意匠を凝らすことができるため、高価な建材です。
軒天の建材として大切なのは耐水性と耐火性です。この二点を踏まえ、軽さや防湿性、デザインや費用面から選んでいくと失敗が少ないかもしれません。家屋の耐久性を考えるととても重要な箇所なので、しっかり検討しましょう。
軒天の劣化症状とは?
どのような素材であっても、軒天材は劣化していくものです。軒天が劣化するとどのような症状が出るのか、軽度のものから順を追ってご紹介したいと思います。
色褪せ
直接日光は当たりませんが、紫外線の照り返しを受けて徐々に表面が色褪せていきます。この段階で塗装修理の必要性はありませんが、初期の劣化の症状として捉え、見た目が気になる場合は、劣化を予防する意味で塗り替えるといいでしょう。
チョーキング
軒天に触れた時、白っぽいチョークの粉のようなものが付着したら、塗膜が劣化しているサインです。表面の保護機能の低下が起こっており、放置した場合さらに劣化が進みます。塗装の剥がれが起こる前に塗り替える必要があります。
軒天は高い位置にあるので難しいと思いますが、もし機会があれば触れてみましょう。
シミ
シミを発見したら要注意!
屋根や雨樋等を伝い、家屋の内部に水が侵入している可能性が非常に高いのです。外観から発生原因を探ることが困難なため、シミがある場合は専門の業者に診てもらうようにしましょう。
カビ・コケ・モ
軒天は水分がたまりやすく、表面にカビ(黴)・コケ(苔)・モ(藻)が発生することがあります。特に日が当たらない北側部分は、水切れが悪くなると湿気がこもり、カビ等が発生しやすい場所です。
塗膜の防水性の低下が原因で起こっている場合がほとんどで、そのまま放置しておくと雨漏りにつながる危険性があります。
この場合も早めに専門の業者に診てもらうことをお勧めします。
塗装の剥がれ
軒天材の塗装が剥がれている場合は、かなり劣化が進んでいると言えます。塗装が剥がれた状態では、雨水を吸い込んでしまい腐食の原因にもつながります。
早急に塗り替えなどの補修を行う必要があります。
破損(欠落・穴)
軒天自体に剥がれや割れ、欠落があった場合、腐食が進んでいる可能性が高いです。様々な原因が考えられますが、屋根の奥まで傷みが広がっていることが多く、また軒天としての役割を果たせず、家屋自体にもダメージを及ぼしてしまいます。
深刻な状態にならない前にすみやかな修理が必要です。
軒天の修理方法
いろいろな症状が出てしまった軒天・・修理をするにはどのような方法があるのでしょうか?
軒天の再塗装
軒天材そのものまで劣化が進まず、状態が比較的良好な場合、塗装によるメンテナンスを行います。
まず、既存塗膜の不具合箇所(カビ・コケ等も含む)をきれいに取り除きます。軒天を固定している釘や鉄の部分に錆止めを施して下地を整えます。そして刷毛やローラーを使い下塗り、中塗り、上塗りと塗料を重ねていきます。
再塗装することにより軒天の見た目が美しくなり、耐久性が向上するといったメリットもあります。使用する塗料により費用は変わってきますが、カバー工法や張り替えと比べかなり費用を抑えることができます。
軒天のカバー工法
軒天の下地があまり傷んでいない場合には、カバー工法(重ね張り)が用いられます。
補強を行った後、既存の軒天の上に新しい軒天材を重ねて張っていきます。撤去作業が発生せず、短い工事期間で費用も安いことが特徴ですが、上から被せて張りつけるため、スクリュー釘等でしっかり留めることが重要になります。
軒天の張り替え
軒天が著しく劣化している場合、既存の軒天材を撤去し、新しい軒天材に張り替える修理方法です。
撤去解体、取り付け作業に加え、新しい軒天材に合わせた建材の加工が必要になり、修理費用は他の方法と比べ一番高額になります。また、古いケイカル板にはアスベストが含有されているため、廃棄費用が割高になります。
その他気になる点は?
軒天の色について
色選びを適当にしてしまった結果、塗装後に失敗した・・というケースがありますので注意が必要です。外観からも色合いが見えるため、外壁との組み合わせを考えて決めていきましょう。
軒天は日が当たらないことが多く少し暗めに見えますので、白色やクリーム色、ベージュ系といった明るめの色合いが多いです。迷われた時には、外壁よりも少し明るいものをお勧めします。
ただし、最近はダーク系の色も人気を集めています。汚れが目立たない、重厚感が増す、屋根との一体感が出るといった理由で、黒系やダークブラウンを選ぶ方も増えています。
いずれにしても他との調和が大切なので、建物全体を見ながら選びましょう。
内部結露に注意!湿気対策
内部結露とは、壁の内部や床下、天井裏等に結露が発生することです。
軒天の内部結露には、屋根裏にたまる湿気を排出する役割を持つ「有孔板」と「軒裏換気口」が対策として挙げられます。
有孔板(有孔ボード)は等間隔で多数の穴が開いており、屋根に通気口がある場合に使用することにより、通気性が高まります。有孔板には板の一部に穴が開いているタイプと、全面に穴が開いているタイプの2つがあります。
軒裏換気口は軒天の内部の湿気や熱気を排出する換気口で、換気上有効な位置に2ヶ所以上取り付けるよう定められています。屋根の頂部に設置する棟換気と併用することで、さらに効果的な換気が行えます。
まとめ
軒天は普段あまり目に留まることが少ない部分ですが、とても大切だということがお分かりいただけたでしょうか?
外から見える箇所でもあるので、劣化を防ぎ綺麗な外観を保っておきたいですよね。
修理が大掛かりになる前に、日頃より状態をチェックし、気になる症状が表れた場合は早めのメンテナンスを心がけましょう。