ここ最近もまれに見る土葺き屋根は、耐震性に問題があり、早期改修が広く呼びかけられております。
瓦の固定釘止めが義務化(既築住宅のお客様もご注意下さい)
引用元:livedoor ニュース
瓦の釘止めが義務化されました(今回は新築住宅対象)
先日、国土交通省で台風や地震による屋根瓦の飛散や落下を防ぐため、屋根の全ての瓦を釘などで固定する方針が発表されました。今回の発表では、新築住宅が対象ですが、すでに建築されている住宅についても瓦固定化を進める検討に入ったとの事です。
すべての瓦を釘などで固定する事を義務化
最近建築された住宅や新しく葺き替えられた瓦屋根の平瓦(桟瓦)は、瓦連盟や瓦連合の団体が率先して『瓦の全数釘打ち』を推奨しているので、釘打ち住宅も多くなりましたが、古い瓦屋根住宅は軒先付近の瓦にしか釘打ちはされていません。
また、釘打ちされていても『瓦全数釘打ち』ではなく、数枚の瓦に一枚の釘打ちや、所々の瓦に釘打ちされている事もあり、今回の全数瓦固定の義務化は、大型台風や地震などの自然災害の対策にはなると思います。
重い瓦でも飛ばされてしまう昨今の台風
風速30m以上ともなると、大人の体重でも歩行が困難になるほどです。
【重量があると言われる瓦の重量】
土葺き燻し和瓦 | 1枚約2.6㎏ |
土葺き陶器和瓦 | 1枚約2.7㎏ |
スレート和瓦 | 1枚約2.8㎏ |
モニエル瓦 | 1枚約4.5㎏ |
瓦桟に引っかけ重ねられて葺かれていて、重量があると言われる瓦も、豪風である横風には耐えきれないのも頷けます。
一方、瓦屋根の住宅は瓦固定の費用で負担増になってしまいます
瓦数枚の補修や瓦屋根の葺き直しの際に、検討が必要かもしれません。
※瓦屋根の葺き直し(屋根下地を直し、既存瓦をもどす工法)
2020年9月の段階では、すでに建築された瓦屋根住宅は、今後瓦の固定化を進める方針との事です。
これからも瓦屋根で暮らしたいと決められているお客様は、瓦の一部補修や部分補修の際に、瓦固定の検討が必要かもしれません。
瓦葺き直し費用について
瓦の固定化に伴う屋根の葺き直しの費用についてご説明致します。
屋根の葺き直し(※ふきなおし)とは、既存の屋根瓦を一時的に撤去し、傷んだ下地を補修や交換で回復させ、一時的に撤去した屋根瓦を再利用して葺く工事法です。
和瓦は長く使用できる屋根材ですが、屋根の下地である防水シートの寿命は長くても約20年なので、瓦屋根は葺き直しで対応するのが経済的でもあります。
また、セメント瓦やモニエル瓦は10年毎に塗装を行う事で機能性を保護する事にもなりますので、既存の屋根の状態に合わせて工事法を選択しましょう。
瓦屋根葺き直し工事内容
既存屋根瓦剥がし | 既存の瓦を剥がします。 |
下地増し貼り・調整 | ラーチ合板12㎜使用 |
ルーフィング貼り・樹脂瓦桟設置 | 防水シートの防水性能・耐久性・素材により異なります。 瓦桟は樹脂製を使用します。 |
既存瓦の再設置 | 既存の瓦を全数釘打ちして留めていきます。 |
棟積み直し | ガイドライン工法にて施工します。 |
瓦の葺き直し参考例
上記が葺き直しに必要な工事項目になります.
屋根下地の状態によって施工内容が多少変動しますが、
屋根の葺き直しの一般的な相場は 1㎡ / 6,000円~9,000円程度
(その他足場費用など)ですので、葺き直し検討時の参考にして見て下さい。
☆瓦の葺き直しは、瓦屋根の住宅にしか出来ませんのでご注意下さい☆
瓦を剥がす作業をするなら・・・
瓦葺き直しの際に既存瓦を一度撤去しますので、せっかく瓦を剥がすのであれば新しい屋根材にしようか? と迷われるお客様もいらっしゃいますので
『瓦の葺き替え工事※ふきかえ』についても解説しておきます。
瓦屋根の風合いを残したいけど、、と言うお客様には、防災瓦を使用した屋根葺き替え工事です。防災瓦とは地震や台風でもズレない・落下しにくい・従来の瓦屋根よりも格段に軽量化されているなどの特徴がある瓦屋根材です。
防災瓦での屋根葺き替えの工事内容
既存瓦剥がし | 既存の瓦を撤去します。 |
下地増し貼り・調整 | ラーチ合板12㎜使用 |
ルーフィング貼り・樹脂瓦桟設置 | 防水性能・耐久性・素材により異なります。 瓦桟は樹脂製を使用します。 |
桟瓦の本体葺き | 防災瓦(平板瓦)で平部を葺いていきます。 |
既存瓦の処分 | 撤去した桟瓦の処分 |
上記が葺き替えの工事内容になります。
1㎡ / 17,000円~20,000円が防災瓦での屋根葺き替え工事費用の目安です。
【茨城県で行った葺き替え事例】
築年数・・・約35年
既存屋根材・・・セメント瓦
新規屋根材 防災瓦(平板瓦)
東日本震災や台風の影響で2階から脱落した瓦が下屋(1階屋根)の瓦を破損したのが雨漏りの原因でした。
瓦の全数釘打ちはハウスメーカーさんではすでに行われています
瓦の全数釘打ち工法は、ハウスメーカーさんで7年~8年程前からすでに行われています。
各ハウスメーカーさんは時代の流れに乗り、瓦の全数釘打ち工法が行われていますが、メーカーさんによっても施工方法が異なります。
メーカーさんで使っている留め具の種類や留め具の長さなど、今の所は様々ですが
おそらく義務化が進んでいく段階で、留め具の種類や留め具の長さなど細かい仕様等が告知されていくと予想されますね。
既築住宅の全数釘打ち工法の施工方法
既築住宅で全数釘打ち工法の施工方法は、各屋根やさんによって施工方法が違うと思いますが、恐らく下地からの調整が必要になると思います。
私が一番良いと思う葺き直し方法をご紹介いたします。
①既存瓦の撤去 (瓦を再利用しますので傷を付けないよう慎重に行います)
②下地の交換撤去 (釘を打ち付ける瓦桟は交換、野地板は増し貼りが理想)
③新規防水シート貼り(最低限で改質アスファルトルーフィングを推奨)
④瓦桟設置 (樹脂製の高耐久通気瓦桟を推奨)
※瓦桟が雨を塞き止めて雨漏りに繋がる恐れがあるので、水抜き溝がある商品
⑤既存瓦葺き釘打ち (瓦用ワッシャービスで固定を推奨)
※既存住宅では今までの下地等に釘やビスなどで固定しますので、下地の調整や増し貼りなど工事が必要になってきます。
上記の施工方法を街の屋根屋さんでは強く推奨致します。
瓦の全数釘打ち工法された瓦の部分交換は今まで以上に手間が掛かります
例えば、瓦の全数釘打ち工法が施された瓦の一部補修工事は、どのように施工するのでしょうか?と言う疑問に瓦職人の見解を申し上げます。
瓦一枚を交換の際に、周辺の瓦も釘で固定されていますので、交換はかなりの手間がかかり、瓦を捲るのも大変な作業になります。
実際の交換方法は?
対象の瓦を出来る限り捲り、留めている釘をボルトクリッパーや番線カッター(釘などを切断する工具)などを使用し、瓦桟ギリギリの所で釘を切断します。
次に固定具である釘を切断したら、周辺瓦を傷付けないように慎重に外します。
新しく交換する瓦は、周辺の瓦が釘で固定されている為に、釘が打てなくなる事が想定されるので、コーキングなどでズレ落ちしないように固定します。
今まで釘止めされていなかった瓦の交換は安易でしたが、全数釘打ち工法された瓦の部分差し替えは、干渉の瓦が釘で止まっている為、瓦の差し替え固定は、釘打ち以外の固定方法になります。全数釘打ち工法は今後の屋根業界の課題になると思います。
台風が頻発する沖縄などの屋根瓦は以前から台風対策が施されています
昨今の台風は巨大化しており、各地域に大きな被害をもたらしております。
沖縄では台風の事前策として、漆喰は側面と継ぎ目に塗っており、それにより台風の被害を最小限に抑えることができるようになっています。
因みに沖縄では木造住宅はほぼ無く、鉄筋コンクリート住宅が多くなっているのも台風の通り道になっている沖縄ならではの台風対策ですね。
昨今の台風は、全国的にも多大な被害をもたらしていますので、瓦の全数釘打ち工法が義務化される事になったのでしょう。
ガイドライン工法とは?
ガイドライン工法とは2001年(平成13年) 8 月 13 日に発行された屋根葺き工法で業界基準として設けられ、現在ではこの工法に基づいた施工が推奨されています。
1995年の阪神・淡路大震災で戸建て住居が甚大な被害を受けた事で、建築基準法が見直され2000年の改正では屋根葺き材の性能規定が設けられました。
ガイドライン工法以前の旧工法とは何?
引っ掛け桟葺き工法
現存する多くの瓦屋根は引っ掛け桟瓦葺き(ひっかけさんがわらぶき)とよばれる工法で施工されています。
瓦桟とよばれる細くて小さい木に瓦を引っ掛けて留めつける工法です。
瓦の頂点部に取り付ける棟だけは、土と漆喰を用いる湿気工法で積み上げられていることが多いです。
瓦桟とよばれる細くて小さい木に瓦を引っ掛けて留めつける工法です。
瓦の頂点部に取り付ける棟だけは、土と漆喰を用いる湿気工法で積み上げられていることが多いです。
土葺き屋根
土をつかって瓦を葺く方法を湿式工法とよび、土をつかわずに瓦を葺く方法を乾式工法と呼びます。
台風にも屈しないガイドライン工法
平成12年に全国の自治体ごとに「基準風速」を決め、大型台風下の強風でも瓦が飛ばされない工事を実施するよう指示して生まれたのが「ガイドライン工法」です。
瓦屋根の強風対策でもっとも大切なことは、風が通り過ぎるときに生じる瓦を巻き上げるカ です。
風が瓦屋根の表面に当たったときの外圧と、持ち上げようとする内圧を緻密に計算して施工します。
ガイドライン工法で施工された現場
ガイドライン工法なら地震にも強い
ガイドライン工法は、巨大地震(震度7)にも耐える耐震工法で、 木造建築の場合地震時にもっとも揺れの影響を受けやすいのが屋根の頂点部の棟です。
こうした部分ごとの耐震実験や実物大の家屋による振動実験の結果を受け、 巨大地震の揺れにも対応できる工法としてまとめられたのがガイドライン工法です。
瓦屋根以外の屋根材は全数釘打ち工法です
金属屋根とスレート(コロニアル)屋根のメーカー推奨施工方法は、全数釘打ち工法になっております。
瓦屋根は、これまで釘で留められていないケースが多々あり、私が屋根屋になりたての時に、瓦がぐらつき、怖い思いをしたことを覚えています。
なぜ今まで全数釘打ち工法がされていなかったのかと疑問に思いますが、昔からの古き風習なのだと思います。
次は、瓦屋根以外の全数釘打ち工法をご紹介いたします。
各屋根材のビス(釘)固定方法
こちらはスレート屋根材は、ケイミュー社のコロニアルグラッサという商品です。
玄能(ハンマー)を使用して打ち込みますが、屋根の形状に合わせて切断する作業が大変難しく、素人にはできません。
こちらのスレート屋根材は、 鉄製熔融亜鉛メッキでできている留め具の釘で、スレートに5か所の釘穴があり、全ての釘穴に打ち込んでいきます。
スレート釘留め施工
金属屋根の留め具ビス
こちらは、ガルバリウム鋼板製の金属屋根です。
こちらの留め具ビスはダンバという商品で、ゴムワッシャー付きビスになっており、留めた箇所からも雨が入らないようになっております。
瓦屋根の留め具はゴムワッシャー付き釘(ビス)
こちらは、棟を止める釘留めの画像になりますが、ここ最近は釘からビスに移行しており、ブッシュ付きのビスが使われる事が多くなりました。
使用されるビスは、引き抜く力に強く電動工具にて施工ができるため、工事の効率化にも反映します。
雨仕舞をしっかりと行うことで台風対策や雨漏りの予防にも繋がります。
平板瓦の棟釘打込み
今後も耐震化・耐風化が求められてきます
先日、国土交通省で台風や地震による屋根瓦の飛散や落下を防ぐため、屋根の全ての瓦を釘などで固定する方針が発表され、今の所は新築住宅が対象ですが、先々は既築住宅も瓦固定化を進める方向です。
既築住宅も義務化が決まれば消費者の方には負担が増え、瓦離れが加速するように感じます。
古来から日本では、瓦は使われており、私も好きな屋根材の一つですが、新築時の瓦固定化も費用が一割程アップするようですので、慎重に事を進めて頂きたいと思います。
※既存住宅は瓦固定化が確定していませんので、変えないとまずいですよと言った悪徳業者にはお気を付け下さい。
因みに余談ですが、この報道があってから瓦を固定する釘メーカーさんの株が、ストップ高になっているそうです。
私は株をやりませんので、詳しくはありませんが、投資家さんたちは情報が命でしょうから、流石だなと感心しました。
今回は、『瓦の固定釘止めが義務化(新築住宅対象)』について解説してみましたがいかがでしたでしょうか。
まとめ
街の屋根やさん水戸店は、瓦職人常時6名在籍していますので、瓦の釘浮きや瓦の点検などの些細な事でも対応致します。
『うちの瓦は釘止め固定されているの?』『どんな屋根工事方法が良いの』など
屋根でご不安のあるお客様は、ぜひ街の屋根やさん水戸店の無料調査をご活用ください。親切丁寧に調査・アドバイスさせて頂きます。